Claude Fable 5がNP困難問題でGPT-5.6 Solを圧倒――AIエージェントを24時間走らせるVPS環境の選び方
結論から言う。 モデル選びより「エージェントを止めずに動かし続ける環境」のほうが、実務インパクトは大きい。ベンチマークを読み解きながら、VPS運用の勘所を整理したい。
話題のベンチマーク:NP困難問題でFable 5が圧倒的な安定性を見せた
エンジニアのCharles AZAMさんが公開した記事が、Hacker Newsで大きく盛り上がった。実験の内容はシンプルかつ骨太だ。
KIROと名付けられた光ファイバーネットワーク設計問題(NP困難)を、以下のモデルに30分間解かせる。
NP困難とは? ざっくり言うと「正解を効率よく見つける計算手順(多項式時間のアルゴリズム)が知られていない、非常に難しい問題群」のこと。組み合わせが爆発的に増えるため、規模が大きくなると総当たりでは現実的な時間に解けなくなる。巡回セールスマン問題(最短で全都市を回る順路探し)が代表例で、今回のネットワーク設計もこの仲間だ。だから「厳密な最適解」ではなく「制限時間内でどれだけ良い解に近づけるか」がモデルの実力を測る指標になる。
| モデル | 平均スコア(Plain) | 平均スコア(/goal) |
|---|---|---|
| Claude Fable 5 | 32,386 | 33,145 |
| GPT-5.6 Sol | 34,261 | 35,129 |
スコアは総ケーブル長。低いほど良い。
Fable 5のPlain平均はSol比で1,875ポイント低く、さらに注目すべきはばらつきの小ささだ。Fable 5のPlainは319ポイント幅に収まった一方、Sol Plainは1,958ポイント幅と不安定。記事の著者は「この一貫性はこれまでどのモデルでも見たことがない、純粋な知能だ」と評している。
探索空間の規模感も圧巻だ。パリのデータだけで見ると、ループ構成の下限を絞っても解候補は10^1223オーダーに達する。それを30分で実用解に近づけるわけだから、モデルの"地力"がそのまま出る問題設定と言える。
/goalモードは「努力スイッチ」ではなかった
実験では各モデルにネイティブの /goal モード(あり・なし)も比較している。結果は興味深い。
- 勝率だけ見ると
/goalありが6試合中4勝 - しかし平均スコアは両モデルとも
/goalありのほうが悪化した
なぜか。記事はClaude CodeとCodex CLI 0.144.4のソースを読み込んで実装差を分析している。
- Claude Code の
/goal: セッションスコープのStopフックとして動作。各ターン後にHaiku(デフォルト)が条件を評価し、完了かどうかを判定する。評価モデルはファイルを直接参照できず、トランスクリプトのみを見る。 - Codex CLI 0.144.4 の
/goal: SQLiteにゴール状態を永続化し、create_goal/get_goal/update_goalツールを作業モデルに渡す。スレッドがアイドルになると継続ターンを自動注入する。
著者の結論は明快だ。「/goal はコントロールループと探索経路を変える。良いアイデアをより良くすることもあれば、悪いアイデアに時間を与えすぎることもある。汎用の『もっと頑張れ』スイッチではない」。
ここから見えてくる「実運用の本質」
モデル比較記事を読んで「じゃあFable 5を使おう」で終わらせるのは、少しもったいない。
実験でFable 5が走らせていたのは30分間の継続的な最適化ループだ。人間がPCの前に座って監視し続けたわけではない。エージェントが自律的に探索し、評価し、解を更新し続けた。
本当に必要なのは、AIを動かすサーバーそのものではなく、AIエージェントを24時間働かせ続ける環境だ。
ローカルPCで同じことをやろうとすると、スリープ・再起動・ネットワーク断・バッテリー問題がつきまとう。30分の実験ならまだしも、業務自動化や定期バッチ処理に拡張しようとした瞬間に限界が来る。
LLM APIを使うエージェントなら、CPU VPSで十分動く
一見すると「NP困難問題を解くならGPUが必要では?」と思うかもしれない。だが今回のベンチマークで実際に動いていたのはAnthropicやOpenAIのAPIへのリクエストだ。ソルバーのロジックはエージェントが生成したコードをDockerコンテナ(Harbor 0.1.43)上で実行している。
つまり構成はこうだ。
VPS上のエージェント(CrewAI / LangGraph / OpenHands / Mastra 等)
↓ APIコール
AnthropicのAPIでClaude Fable 5を利用 / OpenAIのAPIでGPT-5.6 Solを利用
↓ 生成コード
Dockerコンテナで実行 → 結果をフィードバック
LLM APIを利用する構成ならGPU不要。VPSに求められるのは安定した稼働時間・メモリ・通信品質であり、多くの用途では4〜8GB程度(おすすめ8GB)が目安になる。
ただし「APIコスト」は別枠。Fable 5は"高性能ゆえに高コスト"
ここで見落としがちなのが、VPS代とは別に発生するLLM APIのトークン課金だ。Fable 5のようなフラッグシップ級モデルは知能が高い反面、一般にトークン単価が高めに設定されている。今回のように30分間エージェントを走らせ続ければ、その分だけAPIコストが積み上がる。
つまり実運用のコストは「安いVPS代 + 決して安くないAPI利用料」で考える必要がある。おすすめはモデルの使い分けだ。
- 難所(最適化・重い推論・品質が効くところ) → Fable 5 のような高性能モデル
- 定型処理・下ごしらえ・大量の軽いタスク → より安価なモデルに振り分ける
VPS上のエージェントフレームワーク(LangGraph など)ならモデルを役割ごとに切り替えられるので、「地力の高いモデルを要所だけに使い、普段は安いモデルで回す」設計にすると、性能とコストのバランスが取りやすい。
ConoHaやXserver VPSで始めるAIエージェント常駐環境
実際にどう組むか、ざっくりした流れを示す。
1. VPSを選ぶ
ConoHa VPSやXserver VPSは国内拠点・低遅延で、メモリ8GBプランから十分にエージェントを常駐させられる。初期費用が抑えられ、月額コストも管理しやすい。どのプランが自分のユースケースに合うかは、以下の診断も参考にしてほしい。
2. Dockerを入れてエージェント環境を構築
今回の実験でも使われていたDockerは、エージェント実行環境の標準的な選択肢だ。CrewAI・LangGraph・OpenHands・Mastraはいずれもコンテナで動かせる。
3. APIキーを環境変数で管理し、systemdかDockerのrestartポリシーで自動復帰
VPSが再起動しても自動でエージェントが立ち上がるよう設定しておくのが「24時間稼働」の要諦だ。
4. ログとコスト監視を忘れずに
30分の探索でAPIコールが積み重なる。タイムアウト・最大トークン数・コスト上限のガードレールは必ず設定する。
詳しいセットアップ手順と損益分岐の目安は以下にまとめている。
→ AIエージェント×VPS運用ガイド:始め方から費用感まで
まとめ:モデルの"地力"を活かすには、環境の"持久力"が要る
- Claude Fable 5 はNP困難な最適化問題でGPT-5.6 Solを平均1,875ポイント上回り、一貫性でも圧倒した
/goalモード は勝率では有効に見えるが、平均では両モデルともスコアを悪化させた。万能の「努力スイッチ」ではない- モデルの実力を引き出すには、エージェントを途切れなく動かし続ける環境が前提になる
- LLM APIを利用する構成なら GPU不要で、CPU VPS(メモリ8GB目安)で実用的に動く
- ただしFable 5は高性能ゆえにトークン単価が高め。VPS代とは別のAPIコストを見込み、要所は高性能モデル・普段は安価モデルの使い分けが効く
- ConoHa・Xserver VPS上にDockerとエージェントフレームワークを組み合わせるのが、コストと安定性のバランスが取りやすい
モデル比較の結果に一喜一憂するより、「そのモデルを止めずに走らせる土台」を先に整える。それがAIエージェント実運用の第一歩だと、けせらは思っている。
